令和ブレンド

J-aroma が満を持して数年前に出した精油がある。

あと数日で、令和になる…という日に、
思いついて、J-aroma の後発精油をブレンドして使ってみた。

実は、その前に高熱を出して、数日仕事も休んでいたのだが、
その前に、牡鹿の夢を見て、なんとなく、歴史的な神事があり、
そのために場を護る必要がある…らしいと思っていたところだった。

具体的には、熱が38度から下がらずにいる際に、有用性のある精油は
何だろう???と考えていた。

いつもは、その存在を忘れているのに、その時はどういったわけか、
真っ先に浮かんだ精油が2つ。

それが、J-aromaの、空海高野槙と戸田橘である。

高野槇と橘という、極端な個性派の精油2つ。普段使いにするには勇気がいる?!
その2つをブレンドして、スプレーとマスク用にオイルをつけたコットンを作った。

ひのき風呂

礼子さんがひさしぶりにトリートメントに来た。半分友達のようなお客様。出産があったので、前回は半年以上前だった。その時は、少々悩んでいたことがあって、メールでフォローしたのだった。その礼子さんに起きた、ひと騒動を紹介しようと思う。

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月桃と生姜のハンドトリートメントジェル1

「あのぉ、このクリームって自分で作れますか?」

私が毎週自宅近くのカフェの片隅で開いているハンドトリートメントのコーナーでのことだ。私の本業はネイルサロンの店員だ。昼間、自由な時間があるので、宣伝を兼ねてランチの時間にカフェでOLのハンドトリートメントをする。10分ワンコインという手軽さがいいのか、時間の間に四、五人の依頼がある。そんなOLさん達に混じって、Tシャツにコットンパンツ、スモックを着た小柄な三十歳くらいの女性に聞かれた。カフェではランチタイムということもあるので、香りは控えめにしている。最近は華やかなフレグランスがドラッグストアの人気商品になるようだけど。

「作れますよ、もちろん」

私は、クリームでもローションでも自分でブレンドする。特に出張トリートメントの時は、すぐに作れるものでないと準備が大変なので、簡単なものばかり。その時はベースクリームにアロマオイルを数滴入れたものだった。

「職場で、使えないかな…と、思って」

職場という言い方で、お役所か保育園か、介護施設とあたりをつけた。

「もしかして、介護施設のスタッフさんとか?」

はたして、その女性は目を見開いて、嬉しそうに笑った。

「どうしてわかるんですか?うちのホームのおじいちゃんに、…あ、利用者さんにどうかな~って思って」

「もちろん大丈夫です。今、流行ってるでしょう、アロマ。レクの時間に取り入れたりして」

レクというのは、レクリエーションの略で、介護現場では大抵縮めて「レク」と言う。

「テレビでやったんですよね、ええと、ローズなんとかと、ラベンダー。それから、レモンだったかな…」

少し前にテレビ番組で三、四種類のアロマオイルを特集したことがあって、都内のアロマショップでそのアロマオイルが品切れになる勢いだったことがある。おそるべしテレビ。

「あ、でも、ダメなんですよぉ~、うちでは。テレビでやったヤツ」

「香りがキツイとか言われたでしょ」

ショートボブの頭がコクンと揺れた。こちらを見る目に残念さか正直に出ていた。

「施設長がね、少し昔風の人なんですぅ。お年寄りにはキツイ匂いはちょっとね~って」

たしかにそうかもしれませんねと私はうなづいた。

日本のなじみの香りとは違うアロマオイルの香りは、人によって受け取り方に差が出る。女性に人気と言われるラベンダーなども、男性には不人気だったりする。香りは直接脳を刺激するので、使い方を間違えると大変である。反応が出やすい高齢者や子供が居るところでは、どの精油をどのくらい使うかは、特別慎重に決める。そんな私の話にうなづく様子を見て、訊ねてみたくなった。

「どうして、このクリームを使いたくなったの?」

…ん、と詰まってから、首をかしげて

「なんだかね、懐かしい感じ…田舎の夏休み的な香り??」

その表現で、なんだか楽しくなってしまった。笑い出した私をみて、

「あ…、失礼ですよね、ごめんなさい」

「いえいえ、なんだか、うれしいイメージだったので…」

ショートボブの彼女は、小野千波さん。四国の海辺生まれなんだそうだ。

千波という名は、漁師さんだったおじいちゃんがつけてくれたのだとか。

話を聞いてみると、懐かしい理由がわかった。千波さんのご両親は果物農家だという。

実はクリームには、隠し香に高知産のゆずが入っていた。

収穫時にはゆずの香りにつつまれて、家業の手伝いをしていたそうだから、ほんの少しでも

その香りに反応するのだ。人間の嗅覚の記憶は捨てたものではない。

「でも、ゆずだけではなさそうです。だから、気になったのかも」

それでは…と、作ってあったクリームを小さな容器に小分けして、千波さんに渡した。

「これ、何の香りがするか、考えてみませんか? 今日は敢えてお話しませんから」

千波さんの目が輝いた。

「できたら職場でも、ハンドクリームで使ってみてください。施設長さんやほかの職員の方、利用者さんにも、それとなく香りをお伝えできるかもしれませんよ」

「施設長かぁ…。ん、でもやってみよう!! ありがとうございます」

「時間がとれたら、報告しに来てくださいね。その時、回答を教えますから」

「えっと、いつこれるかわからないですけど」

「お店でみかけたらでもいいし、先に連絡くれてもいいですよ」

名刺をクリームに添えて渡した。千波さんはそれを受け取ると壁の時計をみて

「あぁっ!お昼時間終わっちゃう!!!大変だ~!」

と、脱兎のごとくに駆け出して行った。

千波さんより先に、ハンドトリートメントで使ったクリームのレシピをご紹介しておこう。

黒文字と生姜のハンドクリーム

ベースクリーム  50g  アロマセラピー用に作られた無香料のクリーム基材。

精油: 全体の1%以内になるように ランチ時なので控えめでした。

埼玉黒文字 5滴 高知生姜 3滴   高知ゆず 1滴

 

 

 

 

 

 

初恋のリップクリーム

和の精油・エピソード for October
~うるおいのプレゼント~

姉から電話があった。普段はめったに連絡を取らない姉妹である。
実は…と切り出されて、都内で一人住まいの母が入院でもしたかと、ドキッとした。
「あのねぇ、リップクリームって、手作りできるのかしら?」
はあ~っ?!っと、電話口でうわずった声をあげてしまった。手作りという名の付くモノには、おおよそ縁のない姉からそんな言葉が出るとは!
「藪から棒に、どうかしたのか」と聞くと「ん~、あゆみがね…」と話し出した。
あゆみというのは、姉の娘で今年高校に入った、明るいけれど特にめだつことのないどちらかと言えば大人しい女の子である。そのあゆみちゃんに、どうやらクリスマスにプレゼントを贈りたい相手ができたようだ。姉はその男の子が、西島孝太という一つ上の学年の先輩で、吹奏楽のクラブでサックスを吹いている、ということを聞きだした。
「それでなんで、リップクリームなの?」
姉と話をすると、肝心のところにたどりつくまでに、気の遠くなるような時間がかかる。かいつまんで言うと、孝太くんは学校でも人気があるので、単なるプレゼントではダメで、あゆみちゃんは必死に考えていた。たまたま文化祭で、放送部のスタッフとしてステージ袖に居た時に、準備をする孝太先輩が、唇を触ってリップクリームを塗っていたんだそうだ。練習で乾燥していて、口の端が切れて痛そうだったので、効き目のあるリップクリームを、となった。
「へぇ、そこまで観察してたの」と感心すると、姉は「あの子、私に似て、一途なのよねぇ」と言い、「親として心配しないの?」とつっこむと「大丈夫、並みな子だから、きっとふられちゃうから」と暴言を吐いた。
なんという親だとあきれたが、姉はそういう人だったと思い直し、私はかわいい姪の為に一肌脱ごうと思った。男の子用のリップクリーム。昨今男子用メイクアップ用品が売れているくらいだから、それぐらいは当たり前なのだろうか。とにかくあゆみちゃんに会って話を聞くことにした。
「おばちゃん、世界に一つだけのリップクリームにしたいの!」開口一番はこの一言だった。「それもね、効き目があって、香りも素敵な奴!」
私はどんな香りがいいのか、効き目は保湿だけで大丈夫かを確認した。手持ちのアロマオイルのサンプルを出して、香りを確かめさせる。あゆみちゃんは、若い女の子らしくフルーティな香りを選んだ。私は、それを男の子に使ってもらうのはきっと難しいよと話した。あゆみちゃんはうーんと考え込んだ。

孝太君のイメージは?
かっこいい。
おとこの子っぽいの?
うん。
どんな風に?
ええと…。

聞きだしてみると、いわゆる体育会系な汗臭さではなくて、グループのリーダーとして皆を引っ張っていくようなタイプ。

ふーん、じゃ少し落ち着いた感じに仕上げて、うっすら柑橘系が香るようにするか…。

管楽器で唇が荒れる。練習している時のくせで、唇をなめたりするんだろう。
学生の時、そういうクラスメートが居た。やっぱり何度もリップクリームを塗っていた。スティックタイプがいいの?と聞くと、うーんと再び考え込んだ。他のファンの女の子からスティックをもらっているのを見たことがあるらしい。

へえ、もてるんだね。

あゆみちゃんの眉間にしわが寄った。

じゃ、他になさそうな、ぬりやすくて面白いヤツにしようか。

私の頭に浮かんだのは、チューブ入りのリップジェルだった。ジェルの代わりに、ゆるいクリームにすれば保湿は充分、天然素材だけの食べても大丈夫なものも作れる。レシピを書いてあげるから、自分で作ってみてねと言うと、あゆみちゃんの口がぽかんと空いた。大好きな人にプレゼントするなら、自分で作らないとね、と言うと、やっと、できる?私にも?と心配そうに聞いてきた。

じゃあ、私の家で作ろう、一緒に。手伝うから。

次の日の夕方、あゆみちゃんがやってきた。なんだかとても緊張しているので、どうかしたの?ときいたら、二週間後に孝太くん達はクリスマスコンサートに出演し、孝太君のソロ曲があるのだという。その前に渡してあげたい!!!とあゆみちゃんは真剣だった。

大丈夫、むずかしくないからさ。

私の考えたレシピは、こんな感じだった。

  • 椿オイル 純正の一番搾り
  • みつろう これは、ゆるめに作りたいので、ハゼろうを使った。
  • 和の精油
    1.月桃
    2.小夏
    3.モミ
  • 容器[リップチューブ]

なんとか作り終えたのは、夜の8時過ぎだった。あとはチューブに入れるだけ。慎重にチューブにクリームを入れていくあゆみちゃんの頬が、ピンク色に上気している。その耳元で「まごころを一緒に詰めてね」と私はささやいた。パッと笑顔が生まれた。…いい笑顔だなと思った。
あゆみちゃんはチューブに詰め終わって、余ったクリームを自分の唇につけている。
私はキッチンカウンターに並べてあった、七色の小瓶の一つを手に取った。友人から紹介されて手に入れた、植物から抽出した液体。もともと染料に使うものだけれど、発色があまりにきれいなので、小瓶に詰めて売り出したところ好評らしい。蓋をはずし、小さなスポイトで数滴、余ったクリームに垂らした。紅の液体がクリームに落ちると、淡いピンク色が広がった。微かに薔薇の香りがする。木べらで丁寧にクリームを混ぜ、別のチューブに詰めて、あゆみちゃんに渡した。

ご褒美、がんばったから。孝太君とお揃いで使えるよ
使ってくれるかな~

そう言いつつ、2つのチューブを手のひらに載せて、あゆみちゃんは楽しげだった。
後日、クリスマスも終わった頃、姉から電話があった。あゆみちゃんはリップクリームを渡すことができたのだが、孝太君の反応はそっけなかったらしく、大分がっかりしたとのことだった。
「でもね…」と姉は一呼吸おいてから続けた。こらえきれずクスクス笑っている。
クリスマスコンサートで、舞台そでに居たあゆみちゃんに、ソロを終えて舞台から引き揚げてきた孝太君は、あゆみちゃんのチューブのリップを持って、軽く振ってみせたそうだ。

作: 青山 維
2014 10 22