ギャップ

数年前から、自分がかつてやりたいと思って始めたこと、
その時から得てきた技術や知識をポツポツと活かしている。

けれど、それが本当にやりたいこと・・・ではなさそうだ。
技術も知識も・・・その先にあることへの道標。

このみちのむこう

なにがおもしろいって、
何一つ、見通しってものがないのに、
それでも、やることは出てくるし、
面白いことや、素敵なことに、
日々遭遇している。
なにかを獲得したとか、
安心、安全な後ろ楯を得たとか、
人気者で、誰もが手助けをしてくれるとか
そんなことは、なにもないのだけれど
みちったって、そんなすごいのじゃなくて、
なんとなく、歩いていける感じなスペースだったり、
どこかの歩道のようだったり、建物の中だったり…と、
リアルな世界でのそれと同じような感じってこと。
今のところ生業になっている仕事は、望んで続けていこうと思うだけのものには、残念ながらなっていない。
けれど、縁あって出会った世界、業界には、新しい視点と課題があり、それらをうまく活用して、その先の道しるべにしている人々がいる。
私はそこに所属することはないかもしれないけれど、それも含めての世界には死ぬまで暮らしていくのだし、
袖振り合うも多生の縁ならば、出会ったときにできることをやりながら、それぞれの歩みを進めればいい。
そんな私が、私としてできることは何だろう?と考えて、このサイトでまとめていこうと思った。 。。。思ったけれど、実際は拡張はして、様々な情報を得て、経験もし…それらをまとめるとはどういうことか、わからないままに、日々が過ぎていった。
音楽をやる人、演劇をやる人、英語やスペイン語を駆使して仕事をする人、ダンスしたり舞ったりする人、サイトで手作りの品を販売したり、自分のサロンの宣伝や製品を紹介する人…。なんという行動力!!!!と感嘆してしまう人々がこんなに居るんだ❗
という、大きな発見がありつつ、その何れも自分がやるような気がしていなかった。。。
365日のまなび舎
そんな風に思えたらいいのかな・・・とやっと納得がいった。
スペシャリストじゃないんだもん。上には上がいる。
そこまでの力も、才能も、堪え性もない、普通の人だし。
まなび…といっても、学問ではなくて。
日々、暮らすこと、生きることを楽しめる、コツというか、ツール。
できれば、自分の周囲の、すべての命と共に。

見切り発車

いろいろ考えて、

構成を決めてから…と思っていました。

でも、書きたいことの方が、増え始めて

テーマやなんやらを考えていたら

いつまでも書けなくなってしまうのです。

だから、とりあえず、発車。

書きながら、考えていけたらいいかな・・・と思っています。

 

月桃と生姜のハンドトリートメントジェル1

「あのぉ、このクリームって自分で作れますか?」

私が毎週自宅近くのカフェの片隅で開いているハンドトリートメントのコーナーでのことだ。私の本業はネイルサロンの店員だ。昼間、自由な時間があるので、宣伝を兼ねてランチの時間にカフェでOLのハンドトリートメントをする。10分ワンコインという手軽さがいいのか、時間の間に四、五人の依頼がある。そんなOLさん達に混じって、Tシャツにコットンパンツ、スモックを着た小柄な三十歳くらいの女性に聞かれた。カフェではランチタイムということもあるので、香りは控えめにしている。最近は華やかなフレグランスがドラッグストアの人気商品になるようだけど。

「作れますよ、もちろん」

私は、クリームでもローションでも自分でブレンドする。特に出張トリートメントの時は、すぐに作れるものでないと準備が大変なので、簡単なものばかり。その時はベースクリームにアロマオイルを数滴入れたものだった。

「職場で、使えないかな…と、思って」

職場という言い方で、お役所か保育園か、介護施設とあたりをつけた。

「もしかして、介護施設のスタッフさんとか?」

はたして、その女性は目を見開いて、嬉しそうに笑った。

「どうしてわかるんですか?うちのホームのおじいちゃんに、…あ、利用者さんにどうかな~って思って」

「もちろん大丈夫です。今、流行ってるでしょう、アロマ。レクの時間に取り入れたりして」

レクというのは、レクリエーションの略で、介護現場では大抵縮めて「レク」と言う。

「テレビでやったんですよね、ええと、ローズなんとかと、ラベンダー。それから、レモンだったかな…」

少し前にテレビ番組で三、四種類のアロマオイルを特集したことがあって、都内のアロマショップでそのアロマオイルが品切れになる勢いだったことがある。おそるべしテレビ。

「あ、でも、ダメなんですよぉ~、うちでは。テレビでやったヤツ」

「香りがキツイとか言われたでしょ」

ショートボブの頭がコクンと揺れた。こちらを見る目に残念さか正直に出ていた。

「施設長がね、少し昔風の人なんですぅ。お年寄りにはキツイ匂いはちょっとね~って」

たしかにそうかもしれませんねと私はうなづいた。

日本のなじみの香りとは違うアロマオイルの香りは、人によって受け取り方に差が出る。女性に人気と言われるラベンダーなども、男性には不人気だったりする。香りは直接脳を刺激するので、使い方を間違えると大変である。反応が出やすい高齢者や子供が居るところでは、どの精油をどのくらい使うかは、特別慎重に決める。そんな私の話にうなづく様子を見て、訊ねてみたくなった。

「どうして、このクリームを使いたくなったの?」

…ん、と詰まってから、首をかしげて

「なんだかね、懐かしい感じ…田舎の夏休み的な香り??」

その表現で、なんだか楽しくなってしまった。笑い出した私をみて、

「あ…、失礼ですよね、ごめんなさい」

「いえいえ、なんだか、うれしいイメージだったので…」

ショートボブの彼女は、小野千波さん。四国の海辺生まれなんだそうだ。

千波という名は、漁師さんだったおじいちゃんがつけてくれたのだとか。

話を聞いてみると、懐かしい理由がわかった。千波さんのご両親は果物農家だという。

実はクリームには、隠し香に高知産のゆずが入っていた。

収穫時にはゆずの香りにつつまれて、家業の手伝いをしていたそうだから、ほんの少しでも

その香りに反応するのだ。人間の嗅覚の記憶は捨てたものではない。

「でも、ゆずだけではなさそうです。だから、気になったのかも」

それでは…と、作ってあったクリームを小さな容器に小分けして、千波さんに渡した。

「これ、何の香りがするか、考えてみませんか? 今日は敢えてお話しませんから」

千波さんの目が輝いた。

「できたら職場でも、ハンドクリームで使ってみてください。施設長さんやほかの職員の方、利用者さんにも、それとなく香りをお伝えできるかもしれませんよ」

「施設長かぁ…。ん、でもやってみよう!! ありがとうございます」

「時間がとれたら、報告しに来てくださいね。その時、回答を教えますから」

「えっと、いつこれるかわからないですけど」

「お店でみかけたらでもいいし、先に連絡くれてもいいですよ」

名刺をクリームに添えて渡した。千波さんはそれを受け取ると壁の時計をみて

「あぁっ!お昼時間終わっちゃう!!!大変だ~!」

と、脱兎のごとくに駆け出して行った。

千波さんより先に、ハンドトリートメントで使ったクリームのレシピをご紹介しておこう。

黒文字と生姜のハンドクリーム

ベースクリーム  50g  アロマセラピー用に作られた無香料のクリーム基材。

精油: 全体の1%以内になるように ランチ時なので控えめでした。

埼玉黒文字 5滴 高知生姜 3滴   高知ゆず 1滴

 

 

 

 

 

 

母の日

ウチの母の誕生日は、5月8日。そう、母の日である。世間が、一ヶ月以上前から「母の日には~」とか「日頃言えない感謝をこめて」!と、いらぬことを叫び続けてくれるので、ここ10年程は欠かさずプレゼントを届けている。ありがたいことに、何にしようというまでもなく、町に出ればここそこにプレゼント用にセットした商品が並んでいるし、仕事の合間に携帯でネットショッピングでポチっとしてもいい。横着な娘だと思われるかもしれないが、自分がほしくなるようなきれいにラップされてメッセージまでついているパッケージがあるのだ。。。ついコストパフォーマンスでそちらを選ぶ。
ところが、だ。兄の娘で小学校5年の絵美ちゃんが、お母さんのかわり~と言って、手作りのコースターをくれた。そこで歯車が別なギアとかみ合った。
兄は絵美ちゃんのお母さんとは別れてしまっていて、絵美ちゃんは女の子の相談ごとは私のところにしてくる。兄にも彼女は居るのだけどね・・・。いかんせん、若すぎてどうもそんな感じではないのだ。私は自営のセラピストだから、サロンは、絵美ちゃんが放課後立ち寄れる居場所の一つにもなっている。
学校の工作の時間に、母の日のプレゼントを作ることになって、絵美ちゃんは五枚もコースターを作ってくれた。なんでも、サロンで出す飲み物のコースターが使い捨ての紙のだったから残念に感じていたそうなのだ。・・・なんてトコみてんだろう・・・。
絵美ちゃんが帰った後、サロンの片づけをして、作ったばかりの月桃のコーディアルの味見をしながら、コースターをみていたら、なんだか嬉しいような、はずかしいような気持になった。

自分の母になにをあげたらいいんだろう、と改めて考えると何も浮かんでこない。時折、母にハンドマッサージしたり、バスソルトをバスタブに入れておいたりしたことはあるが、母は娘の仕事を定かには知らない。
飲み干したコーヒーカップを片づけ、サロンを出た。携帯が鳴った。兄からだ。
「もしもし、おれ」  幾つになっても名乗るということを知らない。
「絵美ちゃん、帰ったよ」
「うん。今風呂入ってる」
「なんか?」
「おふくろがさ、調子悪いみたい」
「え?ウチ行ったの?」
「うん・・・ちょっと寄った。なんか、首痛いらしいよ」
「えー、首?!どこかぶつけた?」
「いや、そういうんじゃなさそう」
「ちょっとぉ、使えないなぁ、兄貴でしょ」
「だって、急いでたんだもん」
少々ムカついたので、電話を切った。そのまま母に電話をした。
「もしもし」
「あら、あんたまで。さっき来たわよ、兄の方が」
「首痛いんだって?なんかやったの?」
「うたたねしちゃったの、電車で」
「大丈夫なの」
「まあね・・・」
「寝違いかな、首熱い?」
「そうでもない」
「寝る時、首のところにバスタオル入れて」
「はーい」
母は子供たちと喧嘩をほとんどしたことがない。父が早くになくなったから、喧嘩している暇は母にはなかったのかもしれない。私と兄がよく喧嘩をしていたから、止め役だったこともある。子供の言うことにもいちいち耳を傾けていた。それは今もかわらない。
ちょっとした沈黙の間に、私はプレゼントのことを思い出していた。
「あの、さ。ちょっとみてあげる、週末行くよ」
「あら、そう。わかった」
電話を切った自分の鼓動が速くなっていて、苦笑いした。なれないことするもんじゃない。さて・・・。
母もずいぶん年をとっている。得意の裁縫するのに糸が針に通らないと言っていたのは、いつだったろう。

そのときひらめいた。あずき。

母が去年、冬至に食べるんだと言って一キロはある小豆を買って、余ったものを私に押しつけたのだ。北海道の物産展で断りきれずに買っ

てきた小豆は確かにおいしかったけど。

小豆を袋ごと取り出し、キッチンの引き出しから晒した手ぬぐい地を一枚取り出した。手ぬぐいを幅のままに二つに切り、さらにそれを二重にしてから、二つに畳んで縫い合わせる。縫い目を中に返して片端をぐし縫いして留める。割れているものは外ずして、タオルでザッと磨いておいた小豆を袋の中に入れて、開いている袋の口をぐし縫いして留める。これで完成。自然素材のホットパックだ。

早速、電子レンジで一分暖め、タオルにくるんで肩に乗せてみた。やわらかな小豆の香りとともに、じんわりと暖かさが肩と首に降りてくる。化学製品のジェルのホットパックや、化学反応を利用した使い捨てカイロはよく使うけれど、それとはだいぶ使い心地が違う。暖かさが伝わるのに併せて、身になじんでくる。不思議なやさしい感覚だ。ふと、香りを足してみようと思い、羊毛フェルトにほんの少し、高知のショウガの精油を付け、パックとタオルの間に挟んで、再び肩に乗せた。かすかなあずきの香りにショウガの香りが効いている。母が気に入りそうだ。

声で伝える

IMGP0076このサイトの構想は、もう20年位前にさかのぼります。
漠然と声で何かしたいと思っていました。
文字で文章を綴ることは、ずっとやっていたことですが、
それを声で表現するところまで繋げて、その先へと考えていました。

もうひとつ。
これは物心ついた時からすでにあったことですが、
自然と言われるもの、自分を取り巻く事象の在り方から、与えられるものを
私なりに表現したいな…それらがどんな風に活用されて、何をもたらすのか。
おそらく、昔から、人と環境ってそういう風に循環している力の一端だったのだろうと思います。

人と自然とのつながりが切れていて…とか、時々聞きますが
つながりが切れているというよりは、働きかけに気づくことが少なくなった、
気がついてもそれが何なのかわからないで過ごしている…そんなようなことではないかと思います。

そんなことも、昔のお話などには、時々語られていて、それらを読みながら、ああこの間こんなことがあったな…と、
今の日常と結び付けてみたりしています。